睡眠という概念と動作という時間

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夕方、遠藤の家に笠松錐と笠松創先生、田中がやって来た。 遠藤は頑丈な鎖を倉庫から持って来て柱にくくりつける。 「状況は先程話した通りだ。まずは今日を乗り切らなければ雁真君は死んでしまうらしい。千鶴ちゃんにはこの鎖に縛られてもらう。颯が異空間を作り、この柱だけを異空間と融合させる。そうすればもし千鶴ちゃんが能力を無効化しても柱と鎖だけは存在できるからな。」 笠松は溜め息をつく。 「雁真、なんでこう面倒に巻き込まれるのよ。」 「『サガ』ってやつじゃね。てか、創のおっちゃんって強いの?」 「私もお父さんが争う場面を見たことないから分からない。能力も持ってないみたいだし。」 笠松創は呑気に鼻歌混じりに伸びをしている。 遠藤は折咲を柱にくくりつけ、陸舘に合図を送る。 陸舘は自身の能力で部屋内を巨大な白い空間へと変えた。 大瀧は陸舘の能力に改めて驚く。 遠藤は腕時計を見る。 「そろそろ日没だ。…五、四、三、二、一…」 全員が折咲に注目した。 しかし、折咲に異変はなかった。 「…なんも起きねえな。」 大瀧は大きくあくびをする。 遠藤はもう一度腕時計を見る。時計の針は午後七時半を指していた。 「千鶴ちゃん、まだ意識はあるか。」 「はい。」 「何も異常はないんだな。」 「はい。」 「分かった。」 遠藤は目を閉じ、意識を折咲に集中させる。 遠藤の意識は折咲に移り込み、折咲の意識と同化する。 遠藤は折咲の脳信号を支配し、睡眠を引き起こす。 折咲は眠りについた。 遠藤は目を開ける。 「雁真君、これがテレパシーの応用だ。本来は生物を操る能力なんだ。今、千鶴ちゃんを眠らせた。今までの事から推測したが、夜にもう一人の自分が現れたのではなく、眠りについたら現れるとしたらどうだろうか。」 遠藤の立てた推測に笠松錐だけは目を輝かせていた。 その時、折咲に変化が現れた。
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