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「おっちゃん!」
大瀧は混乱する。
しかし周りは安堵の息をはいた。
「良かった、右腕で。」
「は?」
笠松錐も恐怖は感じていなかった。
笠松創本人も驚きはしたものの特に焦った様子はない。
「残念、右腕は義手なんだ。」
笠松創の破れた右腕の部分からゴムに覆われた鋼の機械が見えていた。
笠松創はその場から離れる。
「でも相当な力だね。象に踏まれても壊れないように作ったんだけどいとも容易く破壊されたよ。」
陸舘は笠松創の右腕を復活させる。
「この空間内だけなのでもう一度作り直しですね。」
「アハハ、そんなに給料よくないんだけどね。」
大瀧はこんな状況下で無駄話が出来る皆を不気味に感じた。自分とは別次元で生きている人達に思えてならないのと同時に安心感もあった。
「でも快、これからどうするんだい?」
遠藤は大瀧の肩を叩く。
「予め意識の操作で十分程で目覚めるように調整しておいた。あと五分程で起きるはずだ。」
遠藤が話している間に折咲は起き上がり、笠松創を見る。
【笠松…創…殺す。】
「なるほど、ターゲットを変えることも可能。創、あとは任せてくれ。」
次に遠藤が折咲の前に立つ。
「来い、お前の相手は俺がする。」
折咲は遠藤に殴りかかる。
しかし遠藤は最小限の動きでそれをかわす。
折咲は何度も遠藤に攻撃するが遠藤はそれを全て無駄な動き一つせず避ける。
「もっとよく狙え。かすりもしていないぞ。」
遠藤はわざと挑発する事によって折咲の狙いを自分に向けた。
【遠藤…快…。】
「年上には『さん』を付けろ。」
遠藤は折咲の右腕に触れる。
「折れていないのか?」
瞬間、遠藤の背後、地面から大量の髪の毛が現れた。
「遠藤さん!」
しかし遠藤は後ろを見ずに背後から襲って来た髪の毛をかわす。
「なるほど、右腕は髪の毛で固定しているか。俺はどちらかと言えば短髪より長髪がタイプなんだ。」
長髪である笠松錐は少し安心した。
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