睡眠という概念と動作という時間

13/26
前へ
/2878ページ
次へ
折咲はその場にうずくまる。 遠藤は腕時計を見る。 「そろそろ十分。」 折咲の髪は次第に縮んでいく。 折咲の髪が地面とほぼ同じ高さになった時、初めて遠藤は取り乱す。 「田中!急いで服を作れ!」 折咲の服は髪の毛でできた黒服になった為、このまま髪の毛が元の長さになれば折咲は裸の状態になる。 折咲の黒服が消えていき、へそが見えた辺りで田中は蝋で折咲の服を作った。蝋に色素が入っているため色はある。 折咲の髪が元に戻り、危険が無いことを確認した上で陸館は異空間を消す。 元の部屋に戻った。その世界で折咲は目を覚ます。 「あれ、寝てた?」 折咲は辺りを見回す。 「皆さん、どうしたんですか?」 笠松創は無くなった右腕を見せないように、奥に隠れる。 「あれ、笠松先生はどうしました?」 「違う事で頑張ってくれているから大丈夫だ。」 「私、何かしましたか?」 遠藤は頭を掻く。 「どういう状況で二十人が死んだかは分かった。そして、この場にいる人間は標的に入った。もう逃げられない。」 「そう、ですか…。すみません…。」 「だがこれを使いこなせれば大した力になるぞ。雁真君、錐の下に向かってくれ。」 遠藤は折咲の髪に触れる。折咲の髪は何の抵抗もなく数本抜けた。 「これも持っていってくれ。千鶴ちゃんはこの場に。」 「よ、よし。んじゃ行ってくる。」 大瀧は万屋を出た。外に出るなり寒気に襲われる。 「やっべ、鳥肌ハンパねえ…。」 今までの三十分程で起きた事が頭の中で駆け巡る。 「ぜってぇ関わっちゃいけねえ世界だって今になって分かったぜ。俺の考えが甘かった…!」 大瀧は光の男に勝って調子に乗っていた事を後悔した。 「くそっ、くそっ…!」 しばらく走ったところで大瀧は笠松錐と会った。 「どうしたのよ?」 「遠藤さんがこの髪の毛も、つってよ。」 「分かったわ。」 大瀧は辺りを見回す。 「…あ、やべ。」 「どうしたの?」 「俺、死ぬかも。」 大瀧が笠松に会った場所は夢で見た踏切だった。
/2878ページ

最初のコメントを投稿しよう!

257人が本棚に入れています
本棚に追加