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折咲はその場にうずくまる。
遠藤は腕時計を見る。
「そろそろ十分。」
折咲の髪は次第に縮んでいく。
折咲の髪が地面とほぼ同じ高さになった時、初めて遠藤は取り乱す。
「田中!急いで服を作れ!」
折咲の服は髪の毛でできた黒服になった為、このまま髪の毛が元の長さになれば折咲は裸の状態になる。
折咲の黒服が消えていき、へそが見えた辺りで田中は蝋で折咲の服を作った。蝋に色素が入っているため色はある。
折咲の髪が元に戻り、危険が無いことを確認した上で陸館は異空間を消す。
元の部屋に戻った。その世界で折咲は目を覚ます。
「あれ、寝てた?」
折咲は辺りを見回す。
「皆さん、どうしたんですか?」
笠松創は無くなった右腕を見せないように、奥に隠れる。
「あれ、笠松先生はどうしました?」
「違う事で頑張ってくれているから大丈夫だ。」
「私、何かしましたか?」
遠藤は頭を掻く。
「どういう状況で二十人が死んだかは分かった。そして、この場にいる人間は標的に入った。もう逃げられない。」
「そう、ですか…。すみません…。」
「だがこれを使いこなせれば大した力になるぞ。雁真君、錐の下に向かってくれ。」
遠藤は折咲の髪に触れる。折咲の髪は何の抵抗もなく数本抜けた。
「これも持っていってくれ。千鶴ちゃんはこの場に。」
「よ、よし。んじゃ行ってくる。」
大瀧は万屋を出た。外に出るなり寒気に襲われる。
「やっべ、鳥肌ハンパねえ…。」
今までの三十分程で起きた事が頭の中で駆け巡る。
「ぜってぇ関わっちゃいけねえ世界だって今になって分かったぜ。俺の考えが甘かった…!」
大瀧は光の男に勝って調子に乗っていた事を後悔した。
「くそっ、くそっ…!」
しばらく走ったところで大瀧は笠松錐と会った。
「どうしたのよ?」
「遠藤さんがこの髪の毛も、つってよ。」
「分かったわ。」
大瀧は辺りを見回す。
「…あ、やべ。」
「どうしたの?」
「俺、死ぬかも。」
大瀧が笠松に会った場所は夢で見た踏切だった。
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