睡眠という概念と動作という時間

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電車が大瀧の目の前を通過した後、線路には何も残っていなかった。 「匠ー!」 大瀧はその場に跪く。 「匠ー!」 「あーびっくりした。」 突然の声に大瀧は左を見る。 そこには斎藤匠が立っていた。 「匠、お前助かったのかよ!」 「いや、よく分かんねえ…。俺も死んだって思ったぜ。」 踏切が上がり、笠松が二人の下に走る。 「二人とも大丈夫!?」 「おい錐!俺を突き飛ばすなんてどういう事だよ!」 「あれは違うの!」 三人が必死に状況を整理しようとしていると不意に笠松の右腕が大瀧の首へと伸びていく。 「え?」 笠松の右手はとてつもない力で大瀧の首を掴み、絞め付けた。 「ぐっ…!」 「錐さん!」 「右手が言うことを聞かない!」 笠松は能力で強化した左手で右腕を切り落とす。 右腕の断面から血が勢いよく噴き出る。 「いった…!」 笠松はもう一度能力を創り、今度は新しい右腕を断面から生やした。 その光景を見て斎藤は吐きそうになる。 大瀧は未だに絞め続ける笠松の右腕を振り落とす。 笠松の右腕は地面でしばらくのたうち回った後、動かなくなった。 「はぁはぁ…、なんなんだよ。意味わかんねぇ。」 「多分、あの髪の毛に操られてたんだと思う。本当にごめん。」 二人が息を切らす中、斎藤だけが首を傾げていた。 「いやいや、俺だけ状況が掴めないんだけど。え、何?髪の毛がなんだって?」 「そういやなんで匠は今生きてんだよ。俺はてっきり轢かれたと思ったぜ。」 「いやだから俺にも分かんねえんだって。」 「私も見てたけど変な動きしてたわよ。」 「変なって?」 笠松は斎藤が電車に当たる直前を思い出す。 「体が浮いていきなり後ろに飛んだわ。」 「飛んだぁ?」 大瀧は斎藤の肩を叩く。 「よし、もっかいやってみろ。」 「無理だっつうの!」 「もしかして能力…?」 斎藤は息を呑む。 「能力…?」 「ほら、遠藤さんが言ってたじゃない。死を感じた瞬間に能力は目覚めるって。」 「え、俺なんかが?あの漫画とかでよく見る奴に?」 斎藤は何らかの能力を目覚めさせた。
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