睡眠という概念と動作という時間

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斎藤は自分の手を見つめた。 「俺に、超能力が?」 「じゃねえと説明つかねえって。」 斎藤は大瀧の頭を叩く。 「いでっ!」 「特にそんな強くなった感じはしないけどな。」 「人の頭叩くな馬鹿野郎!」 「二人とも、さっきと同じ状況を作ってみれば?」 大瀧は電車が来ない事を確認し、踏切の中で倒れる。 斎藤は大瀧を起こし、踏切の外に突き飛ばす。 しかし斎藤に何も起こらなかった。 「何も起きない。」 「いってえよ!」 「とにかく斎藤君も一緒に行こう。関係ある人になっちゃったから。」 「何の話ですか?」 「雁真、話してあげて。」 「へーい。」 大瀧は笠松の家に行く間に斎藤に今までの状況を話した。 話し終わるとほぼ同時に三人は笠松の家に着いた。 笠松は鍵を取り出して玄関のドアを開ける。 「お母さん。」 笠松錐の呼び声で笠松の母親が家の中から出て来る。 「錐に雁真君、匠君もどうしたの?」 笠松の母、旧姓を桜庭、名を片桐暦(かたぎり こよみ)と言う。歳は笠松創と同じで訳あって笠松錐を高校一年の時に出産している。 「お母さん、これの原料を調べられる?」 笠松錐は折咲の二種類の髪の毛を渡す。 片桐暦は首を傾げる。 「これを分解すればいいの?」 「原材料を教えて。」 「分かった。」 片桐がビンに触れる。瞬間、ビンの中の髪の毛は消えた。 大瀧は笠松に耳打ちする。 「おいまさかあの人も…」 「能力者よ。物質を分解したり合成したり。原子を操る能力よ。」 「俺の周り皆すげえ奴ばっかじゃん…。」 「遠藤おじさんや私の両親は黄金世代だったらしいから。」 「何の?」 「能力者の。」 片桐ビンを娘に渡す。 「どっちも同じケラチンっていうタンパク質なんだけど長い髪の方と短い方どっちも同じ質量なのよね。」 「髪の毛って丈夫なんすか?脆いイメージがあるんすけど。」 「髪の毛は一本で百グラムまで耐えられるわ。」 「脆っ、」 「でも頭髪全てなら十トン以上は耐えられるわよ。」 「げっ、」 「でもこれって同じ人の髪の毛よね?しかも最近の。異常な速さで伸びた気がするんだけど気のせい?」 「そう…じゃないっすかね。んじゃ、ありがとうございました。」 三人は家を出て万屋に向かった。
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