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短髪の折咲は長髪の折咲を見る。
「あの時の猫なの?」
長髪の折咲は頷く。
【私は、男から、守る。折咲千鶴を、守る。】
大瀧は頭を掻く。
「いや確かに男はケダモノとかって言われてるかもしらねえけどさ、人類男皆悪いとは思わねえぜ。力加減も分からねえ、言葉もたどたどしい、それじゃあてめえの言う男よりも恐ろしいぜ。千鶴ちゃん、そいつの正体が分かったところで、あとは和解か戦争か決めてくれや。」
大瀧は大きく伸びをする。
折咲は長髪の折咲を抱きしめる。
「ごめんなさい…!無理させちゃって、ごめんなさい…!」
【私は、守る。千鶴ちゃんを、守る。】
「もう、いいの…!そんな事しなくていいの!」
【本当に…?もう、大丈夫…?】
「うん…!うん…!」
長髪の折咲は目を瞑り、安らかな表情を浮かべる。
【良かった…。本当に、良かった。】
長髪の折咲は光となってその場から消えた。
折咲はしばらくその場から動けなかった。
大瀧は斎藤の背中を強く叩く。
「痛っ!」
「で、結局のところ匠の能力ってなんだったんだよ。」
「ああ、俺?俺のは多分『行動の消去』ってとこかな。」
「なに格好良くまとめてんだよ。詳しく教えろって。」
「例えば電車にひかれなかったのは踏切内に入るっていう行動をなくしたから踏切外に出たし、腹の傷は傷付くっていう行動をなくしたんだと思うんだよな。」
「なぁ~るほど。…微妙だな。」
「マジでな。」
それからしばらく経ち、折咲が泣き止んだところで大瀧達は自分の体に戻った。
大瀧が目を覚ますと遠藤が横に座った。
「成功か。」
「ん、無事任務完了ってとこだ。」
「そうか、それは良かった。」
「なあ、遠藤さん。もし俺がクラスの能力探し断ったらどうすんの?」
「全ての能力を消しにかからなければな。」
「そっか、じゃあ勿論千鶴ちゃんのも対象っすよね。」
「そうだな。」
大瀧は長髪の折咲の安らぎの表情を思い出す。
「よし、俺、クラスの能力探しやるっすよ。」
遠藤が微笑む。
「そうか、頼んだぞ。」
「その代わり報酬もはずんで下さいよ。」
「抜かりないな。」
大瀧と遠藤が話しているうちに斎藤と折咲も目を覚ました。
折咲は丁寧にお辞儀をする。
「ありがとうございました。私の悩みが解けました。」
「体を大事にな。」
「はい。」
折咲はすっきりした表情で万屋を出た。
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