雁真という少年と錐という少女

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クラスメイト全員が席に着き、チャイムが鳴った。それから程なくして笠松創が教室に入ってきた。 創は教卓の後ろに立つと全員を見回して、大瀧雁真を見つけた。 「んーと、そうだな…。あ、雁真君。」 「は、はい。」 「僕を見て『げっ!?』って言ったよね。悪いけど、今日だけ当番を頼むよ。」 「へーい…。」 嫌々答える大瀧を見て創はニッコリと笑う。 「じゃあ早速号令を。」 「きりーつ。」 大瀧の号令で全員が立つ。 「礼。」 全員が礼をして、席に座る。 創はクラス全体を見渡した後、チョークを手にとって黒板に自分の名前を書いた。 「どうも、これから君達の担任をする笠松創です。宜しくね。自己紹介したいんだけど、聞きたいことあるかな?」 担任の問いに複数名が手を挙げる。それぞれが指されてから質問した。 「結婚はされてるんですか?」 「してないけど彼女はいるよ。それでも、娘もいる。」 「できちゃった婚っすか!?」 「まあ、でも娘も今は高三だからね。戸籍上は結婚してないけど家族みたいなものだよ。他は?」 「今いくつですか?」 「33だよ。ちょうど君達の倍くらいかな。」 「彼女って綺麗っすか?」 「もちろん。他に質問は?無いなら今度は一人ずつ自己紹介しよう。先ずは雁真君から。」 号令が終わって直ぐに寝ていた大瀧にとって予想外の攻撃だった。まさに寝耳に水状態で思わず飛び起きる。 「げっ!?」 「ほら、早く立って自己紹介。」 大瀧の隣で斎藤が腹を抱えて笑っている。それを忌々しく思いながらも渋々立ち上がった。 「…大瀧雁真です。」 「声が小さいよ。」 担任の一言。それで大瀧は吹っ切れた。突然自分の胸を叩き、キリッとした眼差しで皆を見た。 「大瀧雁真です!小さい頃からの夢はスーパーマン!身長は171cm、体重62kg!腹筋は6パック!部活は絶対に入らない決心でここに来ています!あ宜しくぅ!JUST DO IT(ジャスドゥーイッ)!」 冷たい風がクラス内を吹き抜けてクラス内の温度は下がる。対照的にに大瀧の体温は上昇した。大瀧が静かに座ると創が黒板に文字を書き始めた。 「…とまぁ、自己紹介はさておいて。」 恥をかいた本人以外クラス中が笑いに包まれる。 「今から行うのは『他己紹介』です。」 創は黒板に「他己紹介」と書いた。
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