言葉という規制と指令という禁句

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放課後、大瀧と斎藤が帰りの支度をしていると教壇から笠松が名前を呼んだ。 「雁真君、匠君。ちょっとこっち来て。」 「へーい。」 二人が笠松の所に行くと、折咲の姿もあった。大瀧は訝しげな視線を笠松に送る。 「なんすか?」 「三人はもう部活は決めた?」 「俺は自己紹介でも言った通り、入る気ないんで。」 「俺は入りたい部活があれば入ろうと思うんですけど、特に無いですね。」 「私は吹奏楽部に行こうと思ってます。」 「ふぅん、じゃあ折咲さんは別にいいけど二人には僕からも勧誘しないと。」 笠松は三人に紙を渡す。下手な絵と蛇が這ったような字が幼稚園児を連想させる。 「これは?」 「この学校のどこにもない秘密の部活さ。三人は一度行ってみて。雁真君は良い顔されないと思うけど島井さんの名前を出せば大丈夫だから。」 「めんどくせ…。」 「じゃあ一応考えておいてね。」 笠松が教室を出て職員室に向かう。三人になった大瀧達は勧誘書にもう一度視線を落とした。 部活名は無く、場所は『一階男子トイレ』と『三階女子トイレ』になっている。 「…意味が分かんねえ。」 「一度行ってみる?それで先生の気が済むならいいだろ。」 「かったりぃなー。」 「私は行ってみる。何があるのかよく分からないけど。」 「…しょうがねえ。一応行ってみるだけなら俺も行くかな。小便したいし。」 三人はそれぞれのトイレに向かった。最初に、大瀧と斎藤が一階男子トイレに到着する。 「着いたな。」 「そうだな。」 斎藤はトイレ内を探る。途中で人が入って来た為、洗面台に移動した。 「何もないな。」 「そうだな。」 「部活って何?」 「そうだな。」 「いやそうだなじゃなくて。」 「そうだな。」 斎藤は溜め息をつく。 「小便終わったか?」 「現在進行形だ。…ん、終了。」 大瀧はズボンのチャックを閉め、手洗い場に向かう。 「うし、何も無いし帰るか。」 「…あれ、ちょっと静かにしてて。」 大瀧が黙る。やけに静かだ。おかしい。 「雁真、あいつが入ったの見たよな。」 「ん?」 斎藤がトイレ内を探っている時に入って来た男子生徒の姿がなかった。
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