言葉という規制と指令という禁句

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大瀧は胸を張る。 「俺は大瀧雁真っす!一年A組です!」 「斎藤匠って言います。同じく一年A組です。」 「折咲千鶴です。二人と同じで一年A組です。」 元気のよい返事に諸岡が笑顔で頷いた。 「それで三人とも能力があるのかな。」 まってましたと言わんばかりに大瀧が意地の悪い笑みを浮かべる。 「あーやっぱり先輩達にもあるんすか、そういう超能力。」 「まあね。」 「でも俺には無いんすよ。今のところは。」 大瀧のその何気ない一言が周囲の雰囲気を変えた。 吉川達二年は固まっている。 「能力無しってマジかよ…。なんでここにいんだよ。」 「え、なんすかその反応?」 諸岡は首を傾げる。 「飛鳥、前に入って来ちゃった人はどうなったっけ。」 「えー、どうなったっけ?あんまし嫌な事は覚えていたくないから忘れちゃった。」 「確かいきなり血相変えて倒れないっけ?一、二週間は昏睡状態だったよね。」 大瀧の顔から血の気が引いてきた。 「いや、俺は別に元気っすけど…。俺は今からそうなるんすか…?」 「いやそんな事は…、笠松先生から何か言われてない?俺達に話す事があると思うんだけど。」 「話す事っすか…。」 大瀧は笠松に言われた事を思い出す。 「あ、両親の名前を言えって。」 「両親?」 「えと、父さんが大瀧詠一で母さんが大瀧歩美っす。」 「…いまいちピンとこないな。どちらかの旧姓は?」 「母さんの方が島井って言ってたっすね。」 『島井』という名前に二、三年生は安堵の表情を浮かべた。 「島井家の人間か!なら話は通じるよ。」 吉川は大瀧の顔をまじまじと見つめる。 「島井家の人間かー!すげー!」 大瀧は二、三年生に囲まれる。 斎藤と折咲は完全に孤立していた。 「え、何この盛況ぶり。」 「雁真君って凄い人だったんだ…。」 「あの反応は雁真が、て言うより雁真の母親が凄い人みたいだな。」 大瀧は好奇な視線から抜け出し、斎藤達の下にすがる。 「なんか怖い!」 大瀧の様子を見て諸岡は片手を顔の位置まで上げて謝る。 「ごめんごめん、いやでも驚いたよ。『あの四人』は全員無くなったと思ったのに。」 「あの四人?」 「いやいやこっちの話さ。無駄話が多かったね。改めましてようこそ我が部活へ。」 ようやく諸岡からこの謎の部活について告げられる。
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