言葉という規制と指令という禁句

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諸岡が三人に部活説明を始める。 「この部活は笠松先生が独自に作ったものでこの空間は禊が作っている異空間なんだ。入り方は三人とも気付いたから説明はいらないね。それと部活内容なんだけど…」 諸岡は微笑む。 「特に無し。」 「え、」 「この高校は帰宅部がないんだ。全員必ず部活に入らないといけない。それで笠松先生が作ったのがこの部活。先生や僕なんかは能力対策部って呼んでるけど一応は登山部っていうくくりになっているんだ。」 「登山部…。」 折咲は笑いを必死にこらえている。 「まぁ、登山部の内容は先生がでっち上げてくれるから要は何もしなくていいって事なんだ。」 大瀧は怪訝な表情を浮かべる。 「なんで先輩達はここに入ったんすか?楽だから?」 諸岡は首を横に振る。 「僕が能力に目覚めたのは合格発表当日で自分の能力を上手く使えなかったんだ。そんな時、先生がここを作って能力の操作を教えてくれた。だから俺はここにいるんだ。多分三人も先生が何か助けてあげたくてここを教えたんじゃないかな。」 笠松は大瀧達にクラスメイトの能力を探る時間を与える為にこの場所を提供した。 「勧誘にはならなかったかな。こういうのは下手なんだよね。」 「いやいや全然下手じゃないっすよ、よく分かりました。」 大瀧は教室内を見渡す。 光の針を使うコートの男、笠松錐の能力の創造、折咲千鶴の二つの顔、斎藤匠の動作の消去、遠藤快や田中直哉などこの数日間で多くの能力者に触れた大瀧は部活選択というあまりにも日常に近い行為にいくらばかりか退屈を感じた。しかし、この場所は心の奥では期待した非日常に近い存在である。 大瀧の決断はそう遅いものではなかった。 「んじゃ、俺ここに入りまーす。」 その台詞はあっけなく、重要な意味を持っていた。 諸岡は大瀧の手を握る。 「ようこそ、登山部へ。」 大瀧に続いて斎藤も入部を明言した。 折咲はその日は決めず、翌日に違う部活も見てから考える事にした。この後、結局折咲は吹奏楽部に入る事にした。
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