言葉という規制と指令という禁句

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大瀧はステーキを頬張りながら遠藤を見る。 「で、コートの男がなんなんすか?」 ステーキの湯気越しに、遠藤がコーヒーを啜っているのが見える。 「結論からいくと彼は自害した。恐らく自害に見せかけて誰かに殺されたんだろう。自らを針で串刺しにした。」 「殺された?」 「ああ。そういう超能力をいくつも見ている。名前を言っただけで殺せる能力も会った事があるぐらいだ。それで問題なのは彼が何者かに依頼されて君達を狙った事にある。」 「依頼?誰にっすか?」 「そこが謎なんだ。依頼主は彩徳高校の制服を着た男子生徒らしい。顔に特徴はなく、彼の記憶を見てもぼんやりとしていて分からなかった。そして彼の学生証にはかすかにだが『一年A組』と書いてあった。」 大瀧と斎藤の動きが止まる。 「一年A組…。」 「もちろんその学生証が偽物の可能性は大いにある。もしくは年度が違えば元一年という事も考えうる事だ。だがもし、それが本物の、更に言えば今年度の物だったら、言いたい事は分かるな。」 「そいつは完全に悪っすか。」 「ちなみに依頼内容は雁真君、君を殺す事だったらしい。」 「へぇー、いい度胸っすね。」 遠藤は三人分の勘定をテーブルに置く。 「気を付けろよ。その誰かの狙いは君だ。いつでも狙われている状況だという事を忘れるなよ。」 「そんなら俺は来た奴全員病院送りにするだけっすよ。」 遠藤は立ち上がる。 「勇ましいな。御代は払ったから食べ終わったら早く帰るように。」 「ゴチになりまーす。」 遠藤は店を出た。 大瀧はステーキを食べ終える。 「う…、結構量あったな。」 「そんなに頼むからだよ。で、雁真の事だからどうせさっきの話にプレッシャーとか感じてないだろ。」 「んー、分かったのって高校生ってデンジャラスってぐらい?ま、そいつをぶっとばせば終わりだろ。」 「分からないけどそいつが敵だってのは分かるよな。」 「今は一人ずつ能力者を見つけてこうぜ。てことで、作戦は匠、宜しく。」 「了解、じゃねえよ。自分でも考えろよ。勿論俺も考えるけどよ。」 「へーい。じゃご馳走さんです。」 大瀧と斎藤は店を出て別れた。 空は暗く、星が光っていた。 四月なのに寒々とした風が二人の間を通り抜けた。
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