言葉という規制と指令という禁句

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笠松は段ボール箱を持って順に生徒から持ち物検査をする。 「はい回収。…はいアウト。…はい回収。」 笠松が大瀧達の前に来る頃には箱の中は半分程埋まっていた。 「鞄の中を見せてもらうよ。」 笠松は大瀧の鞄の中を見る。 「異常無し。つまらないね。」 「毒吐くの止めてもらっていいっすか。」 大瀧は冷静さを装うが心拍数は急激に上がっていった。 「じゃあ次は匠君、鞄の中を見せて。」 斎藤はしぶる。笠松は斎藤の耳元に顔を近付ける。 「皆の反応を見ていて。」 斎藤は笠松の顔を見る。笠松は笑顔で斎藤を見ていた。 「さあ、早くして。まだ見てない人がいるんだから。」 「…はい。」 斎藤は鞄を開ける。 笠松は鞄の中を覗き、少し大げさに驚く。 「なんだいこれは?」 笠松は斎藤の鞄からコートとミシン針よりも少し大きい針を取り出す。 「コート?それに針も。」 「い、いやそれは…。」 斎藤は笠松から視線を逸らす振りをして周囲に目を配る。 笑っている者や気の毒そうにしている者、全く関心をもたない者など十人十色といったところだ。 笠松も周囲に集中したが、特に目立った点は無い。 笠松はコートに目を付ける。 「あれれ、血が付いてるよ。かなりべったりと。…匠君、後で職員室に。」 笠松はコートをきれいに折り畳み脇に挟む。 「さあ、続きを始めよう。」 斎藤はどっと息を吐く。 「あー、くそっ。」 大瀧がしかめ面で斎藤の顔を覗く。 「おい、あれどうすんだよ。」 「違う、そこじゃない。これで俺もこの事件に関わる事になっちまったよ。あーついてねぇ。」 「二人でなんか話したん?」 「これからな。」 斎藤は机に突っ伏した。 その様子を大瀧の右隣の女子が見ていた。
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