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昼休み、斎藤は職員室に入った。
「笠松先生、コート返してもらいに来ました。」
笠松は斎藤を見ると立ち上がり、職員室から出る。
斎藤は笠松について行き、小会議室に入る。
「匠君、どうぞ座って。」
「…失礼します。」
斎藤は椅子に座る。笠松も向かいの椅子に座る。
まず初めに口を開いたのは斎藤だった。
「なんで俺があのコート持って来たって分かったんですか。」
「その前に制服を脱いで。今僕が一番恐れているのは盗聴されている事だから。」
「え、」
「冗談だよ。盗聴器があったら職員室に入る時に鳴るはずだからね。」
斎藤は決して顔を緩めない。
「で、なんで分かったんですか。」
「教室の窓から雁真君と話しているのが聞こえたんだよ。耳は良いからね。でもその作戦には欠点がある。何か分かるかい?」
「全く。」
「例えばそれを千鶴ちゃんにやって気絶させてしまった場合、どうなる?」
斎藤は笠松の意図する事を見抜いた。
「能力、ですか。」
「そう。クラス皆能力者だ。あのコート男については快から聞いてる。でもその依頼人でなくても正当防衛で攻めてくる能力者がいてもおかしくないんだ。」
「だからって特に変な反応してる奴はいなかったですよ。」
笠松は腕組みをする。
「望月太一、小林当間、屋形美月、玉田宏一。」
「え?」
「この四人が職員室に来た時にあのコートについて聞いてきた。僕は雁真君と千鶴ちゃんを抜いたクラス全員から何かを一つずつ預かって来たから一度は全員僕の所に来ることになる。今のところは二十五人来て、あのコートについて尋ねたのはその四人なんだ。」
「それを狙っての事ですか。」
「その通り。だから先ずはその四人に焦点を絞った方がいい。という事で、あのコートはもう少しだけ預かるよ。見せてくれなんて言われるかもしれないからね。」
「分かりました。」
笠松は立ち上がる。
「話は終わりだよ。じゃあ健闘を祈るよ。」
「はい。」
斎藤は部屋を出た。
少し遅れて笠松も部屋を出る。
笠松が職員室に入る前、誰かに声を掛けられた。
「先生、少しいいですか。」
その人物は大瀧の右隣の女子、川崎円(かわさき まどか)だった。
川崎は笠松に尋ねる。
「斎藤君の持っていたコート、見せてもらってもいいでしょうか。」
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