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笠松は川崎の方を見る。
「なんでかな。」
「見覚えがあったので。血というのはなんですか。」
声はとても冷たく、川崎は終始無表情だった。
「血液が大量に付着していたからね。何かあったのか聞いている所だよ。なんでもそのコートの男と争ったみたいでね。」
「そうですか。…やっぱりいいです。何かの見間違いだったかもしれません。」
「そう。ならいいや。」
笠松は職員室に戻った。
川崎は表情を変える事なく教室に戻った。
放課後、大瀧と斎藤は『登山部』に向かった。
男子トイレの明かりを点けて消し、部室に入る。
部室には諸岡と神袖がいた。諸岡は椅子に座って文庫本を読んでおり、神袖はノートパソコンを開いていた。
「あれ、他の先輩達はいないんすか?」
諸岡が二人に気付き、本を閉じて立ち上がる。
「やあ、他は用事で帰ったよ。昨日みたいに全員集まるのは月に一度位なんだ。」
「マジっすか。」
大瀧と斎藤は近くの机に鞄を置く。
大瀧は窓の外を見るが暗闇しかない。
「神袖先輩、外の景色ってどうにかならないものっすかね。」
神袖は大瀧を横目で見た後、視線をパソコンに戻した。
神袖がenterキーを押すと同時に窓の外に学校から見た正門が映った。
「うおぉ!」
「校長室からの景色だ。これでトップの気分を味わえ。」
「あざーす!」
(神袖先輩って案外良い人そうじゃん。)
大瀧は椅子を窓の方に向け、それに座る。
「あー平和だー。」
斎藤は平和ボケしている大瀧の頭を叩く。
「いたっ、」
「笠松先生から連絡が来てるぞ。」
斎藤は笠松から渡された紙を大瀧に渡す。
『禊君に頼んで川崎円を追え。正門に錐を待たせてある。』
「え、」
「俺頼みづらいからこういうのは雁真が頼めよ。」
「ちっ、めんどくせえの。」
大瀧は神袖に近付く。
「神袖先輩、もう一つ頼み事があるんでお願いします。」
神袖はパソコンに目を向けたまま応える。
「内容は?」
「川崎円って言う女子を追って欲しいって笠松先生に言われてんすよ。」
「クラスは。」
「俺と同じ一年A組っす。」
神袖は画面に川崎円の写真を出す。
「え、なんで知ってるんすか?」
「これには全校生徒の情報が入っている。よし、じゃあ行くぞ。」
神袖は立ち上がった。
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