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神袖禊は一度見た人物や物体の名前と現在地点をいつでも知ることができるという能力を持っている。
更に、そのモデルを異空間に作ることを可能とし、現在大瀧達のいる教室も神袖が自分のクラスをモデル化した物である。その空間に他人が入る場合は自らが定めた儀式を行わなければならない。それがトイレで行うものである。
神袖を先頭に大瀧達は正門に行った。
笠松錐はふてくされながら大瀧達を待っていた。
「遅い。」
「あんまし遅くはないしょ。」
笠松は神袖を見つける。
「あれ、禊じゃない。じゃあ雁真と匠君は登山部に入ったの?」
「え、神袖先輩の事知ってんの?」
「当然よ。私も二年の時まで登山部だったんだから。部長よ部長。」
大瀧は驚いていたが斎藤は内心予想していた。
「なんで辞めたんですか?」
「この学校って部活に入らなきゃ駄目じゃない。だから三年になってすぐに辞めたのよ。それなら年度内の退部で違う部活に入らなくてもいいのよ。」
「その手があんのか!」
「ほら無駄話してないで。早く川崎円っていうのを追うんでしょ。」
「神袖先輩、宜しく頼みます。」
「了解、こっちだ。」
神袖は自分の脳に響く地図を頼りに川崎を追う。
「…もうすぐだ。」
大瀧達は足早に歩く。
斎藤は川崎の後ろ姿を見つける。
「いた。彼女だ。」
川崎はいつものようにイヤホンを耳にして歩いていた。
「ゆっくりあとを追うぞ。」
大瀧達は川崎の後方二十メートル程を歩く。
「どこに行く気だ?」
川崎は次第に人気のない道へ進んでいく。そしてT地路で立ち止まった。
大瀧達は川崎を遠くから隠れて見ている。
「まさかバレた?」
「いや、違う。」
川崎の前方から男性がやって来た。
「あいつは!」
斎藤は男を見て確信する。
「あいつ、俺達と同じクラスの生徒です。」
その男は大瀧達と同じクラスの池谷士銘(いけたに しめい)だった。
川崎と池谷は数言交わした後、川崎がT地路を左に曲がった。
池谷はその場に留まる。
「…あいつ何やってんだ?」
大瀧が首を傾げるのとほぼ同時に池谷は遠く離れた大瀧達に向かって中指を突き立て、自分の方へ曲げて大瀧達を挑発した。
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