言葉という規制と指令という禁句

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大瀧と笠松は池谷の家の居間に座り、大瀧はコーラを、笠松は緑茶を飲んでいた。 池谷は大瀧達の向かいに座る。 「それで俺に何の用があったのかな?」 大瀧はあぐらをかきながら饅頭を食べる。 「さっき川崎と話してただろ。何話してた。」 「別にそんなにまともな話をしてないよ。ただあんな場所で偶然会ったから挨拶しただけさ。」 「本当にそんだけか?」 「それだけだよ。それにそれ以外の事を話していたとしても記憶にないよ。」 大瀧は笠松を横目で見る。 「池谷君、最近何か変わった事はなかった?」 「あなた誰ですか?」 「私は笠松錐、同じ高校の三年よ。それで最近変わった事は?」 「ないですね。いつもと変わんない日々でつまんないぐらいですから。」 「池谷君、一つお願いがあるんだけど奥の部屋を見せてくれないかな。」 「丁重にお断りします。さすがに親に怒られるので。」 「それと今日、斎藤匠君のコートを見て何か思わなかった?」 「さあ、特には。」 池谷は笑顔で答えるが、一瞬動きが止まった事を二人は見逃さなかった。 池谷は二人のコップを片付ける。 「他に聞きたい事は?」 「俺は特に。錐は?」 「私もないわ。」 大瀧は立ち上がる。 「んじゃ、饅頭ご馳走さんな。」 「また来てよ。今度は遊びに。」 「気が向いたらな。」 大瀧と笠松は玄関で靴を履く。 池谷は二人を見つめる。 「ねぇ、二人ってどんな関係?恋人?」 大瀧は池谷を睨む。 「ちげえよ。ただの腐れ縁。親が知り合いだから小せえ頃から知ってんだよ。」 「へぇ、幼なじみってところなんだ。」 「そういう事よ。それじゃあね。」 二人は池谷の家を出た。 池谷は玄関の鍵を閉め、台所に行く。 洗面台から二人が使ったコップを取り出し、床に落とした。 コップは音を立てて壊れる。 その音に池谷は快感を得た。 「あー、あの二人は幼なじみなんだー。」 池谷は壊れたコップを更に何度も踏みつぶす。 足からは血が流れ続ける。 池谷は足の痛みも快楽に変わっていた。 「あー壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい。」 池谷は笑っていた。
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