言葉という規制と指令という禁句

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笠松は黙っている。 池谷は二人に近付く。 「無視されるのは傷付くんだけど。」 笠松は大瀧と繋いでいた手を離す。 「なんで分かったの?」 「さあ、なんででしょうか。」 「あの二人は君のご両親?いたのなら挨拶ぐらいさせてくれないと。」 「不法侵入者への挨拶は警察がしてくれますよ。」 大瀧は池谷の両親を指差す。 「警察来たらてめえも捕まるぜ。」 「ハハハ、冗談だよ。でも君達の口を封じないといけないな。」 池谷は目を瞑る。 「三人の訓、他人を恨んだらダメ。」 大瀧は眉をひそめる。 「は?お前何言って…」 瞬間、大瀧は横に吹き飛ばされる。 「がっ!」 大瀧は壁に勢い良くぶつかる。 「いってぇ…!」 大瀧は笠松に殴られたのだった。 「おい錐!」 「雁真!黙ってて!」 笠松は大瀧に怒鳴った。 大瀧はあまりの衝撃に口をつぐんだ。 笠松は辺りを見回す。 「雁真、今から言うことをしっかり理解して。理解できなくても理解して。多分、彼の言っている事は本当よ。」 「言ってる事ってあの家訓みたいなやつ?」 「そう。これが彼の能力。おそらく空間支配型よ。」 「空間支配型?」 「そう。その場合、颯さんみたいな人じゃなければ条件を達成しない限りそう脅威にはならないんだけど、条件をクリアするとそこではその能力者が頂点になる。そして、きっと彼のその条件はここに入ること。」 池谷は微笑む。 「その通りです。いやぁ、やはり同じ能力者だったんですね。」 「ええ。でも雁真は違うし私はもう能力を使えないわ。」 二人は完全に不利な状態にあった。 「それで、さっきのルールをもう一度教えてくれないかしら。」 「人に恨みを持ったら負け、だよ。」 「もし負けたら?」 「んー、じゃあ心が壊れるってことで。精神崩壊、僕の両親のようにね。」 大瀧の顔を冷や汗が滑り落ちる。 池谷は大瀧の顔を見る。 「いいね、その表情。」 池谷はニヤリと笑った。
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