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「完成だ…。」
俺は全身の力を抜いて、椅子の背にもたれかかった。
椅子はタイル張りの床と擦れあって、ギギッと音をたてる。
いつもは不快なこの音も今日は祝福のファンファーレに聞こえた。
麗らかな春の日差しもスポットライトを浴びているように暑く感じた。
俺の二十作目の作品は今をもって完結した。
四百字詰めの原稿用紙×五十三枚。
春休み初日から今日までかかったが、満足できる作品になった。
俺は机上に置かれた原稿用紙の束を見て、達成感を存分に味わう。
と、同時に虚無感を感じた。
この作品はどこに送るわけでもなく、誰に読ませるわけでもない。
行き先は俺の部屋の机の中と決まっている。
自己満足で終わるつもりはないのだけれど、どうしても一歩を踏み出すことができないのだ。
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