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「でも、翼がない天狗ってまんま人ですね。羽の取れた蝶々みたい……想像したら可哀想になってきた」
なんだかほろり。
馬鹿にされたのか、それとも阿弥が馬鹿なのか、計りかねて、文は阿弥の頬に手を伸ばす。
「最初から羽のない尺取り虫が何を偉そうに」
そして人差し指を口に突っ込んで引っ張った。
「いらいいらい、やえれー」
「ふふふ、不細工」
けらけら笑う文。
どうしたものかと真剣に考え、阿弥は文の指を舐めた。
「べちょ」
「ひゃあ、舐めた!?」
突っ込んだ指を両方とも舐められて、思わず両腕を引っ込めた。
阿弥は自分の頬をさする。
「かふぁ、あー……ほっぺに跡がつくかと思いました」
「ばっちいなぁ」
文は自分の持っている手拭いで指を拭いた。べろんと一回舐められたので、少し鳥肌も立っていた。
阿弥に舐められた指の匂いを嗅ぐと、あんこの匂いがした。気にしていなかったが、あん団子を食べていた様である。
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