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だらだら続く関係は、本当にいつまでも変わらずに続いていた。
そしてそれは、文にとって、とても長く、延々と続く時間に思えた。
しかし、当然そうはならない。
阿弥が屋敷に籠もった。転生の儀をおこなうのだという。
この後、冥界へ閻魔に挨拶に行くとも言っていた。
数ヶ月会えない。そしてその数ヶ月が終わったら、阿弥と会える最後の数ヶ月が始まる。
今更になって限りがあることを改めて思い出すと、なんとなく文は物寂しかった。
初めて興味を持った人間。観察したい。話題が欲しい。
懐いた猫が別の誰かに懐いたような、そんなやるせない気持ち。
だから、文はごろごろとしていた。
腹の奥にあるもやもやが、どういうものだか良く判らず、発散できないでいたのである。
「……不快」
文はまだ、ここまで興味を持ち続けた対象を失った経験がなかった。
そのくせ長く生きているものだから、宙ぶらりんな感情が今ひとつ理解しきれない。
「未熟ですかぁ」
人より遙か長く生きて尚、まだまだ知らぬ自分のことは多いようであった。
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