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「ところで、妖怪は人を襲いますし食べることを知っていますか?」
「はい」
「そうですか。それで、私だって人は食べますよ?」
「はい、承知しています」
「そう。なら、あなたは私が恐くないの?」
「どうなんでしょう」
笑顔のまま、何も変わらず、恐れも、怯えも、諦めも、何もない顔で告げてくる。
頬が薄く撫でられる様な感じに、文は総毛立つ。
驕っているのかしら? 幻想郷の妖怪は、幻想郷の人間を襲わないと。
そう思うと、笑顔のまま、文の頭の中の何かが引きちぎれそうになった。
今此処で爪だの牙だの剥いて見せようか。腕に噛み付いて見せようか。皮膚を裂いて見せようか。
悪い気が起きる。
苛立ちと興味がふつふつと沸騰して、頭の毛がざわざわと逆立ちそうになる。
この子、面白い。
文の好奇心が激しく少女に突き刺さる。
その殺気に似た好奇の視線に、少女は怯まない。
「食べてあげましょうか? 指先の一つでも」
文の珍しいほど剥き出しな殺気。それを受けて、阿弥は困った顔を浮かべた。
「痛いのは好きじゃないですが、命を助けて頂けるのなら指一つなら。あ、左手にしてくださいね」
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