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その言葉がトドメだった。
文は、この少女の正体がさっぱり判らなくなってしまった。
「……初めて見ました。こんな、わけのわからない人間は」
「そうですか?」
問うて首を傾げる。
相も変わらずころころとした笑み。一瞬見せた寂しそうな色はもうない。
「くっ、あはははは。変な人ですね。転生続けて、魂がいびつになってるんじゃないですか?」
「かもしれません。でも、きっと、いびつなのは記憶だけですよ」
「そっちはいびつなんだ」
「そりゃぁもう」
あはは。
少女らは笑い合う。
といっても、見た目が若い妖の者と、転生を重ねている者。どちらも見た目のままというわけではない。
そのくせ、その二人の笑い顔は、やはり見た目相応なものであった。
ひとしきり笑うと、二人はお互いの目を見る。
阿弥はこれからまた歩んでいく。文はこれからまた飛んでいく。それがお互いに判るから、別れの言葉を言う為に。
「よろしくね、文」
阿弥は笑顔で、屈託なく口にした。
やれやれ、以後はどうも呼び捨てらしい。そう思うと、何故か文は心地好い諦めを憶えた。
「よろしくね、阿弥」
二人してまた笑う。
これが、二人の始まりであった。
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