11人が本棚に入れています
本棚に追加
縁は一度結ばれてしまえば、腐ってもなお朽ちないもの。
あれから別れて、文は今まで会った人間のことを思い出す。だが、阿弥の様な人間はいなかった。
だから、興味は継続した。
まだあの娘と話をしたいと思えていた。
阿弥もまた、自分に話し掛けてきたあの妖怪にもう一度会って、もっと詳しいことを聞きたいと思っていた。
お互いにそう思っていれば、引き合うのも道理であった。
「……あら?」
「……おや?」
何故か二人は、里の茶屋で再会した。
ネタ探しに人に化けて散歩をしていた文と、お団子食べたくなって散歩をしていた阿弥が、丁度同じ茶屋の椅子に腰を下ろしたのであった。
「此の間ぶりですね、偶然て恐いです」
「何か縁あったみたいですね。吃驚ですよ。こんにちは、文」
「呼び捨てだし。ま、いいでしょう。こんにちは、阿弥」
一日来の友人は、なかなか馴れ馴れしいものであった。
「ところで、妖怪がふらふらと里に来ていいんですか?」
「大声で言わない、馬鹿」
低い声で嗜めるように文は言う。
最初のコメントを投稿しよう!