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「化けてるのよ。ばれない様に」
「どこが?」
「見なさい、翼ないでしょう。それに着物や履物だって人里に合わせたんです」
「おー」
阿弥は上から下までをジッと見る。
翼がないという以外は普段となんら変わらない姿の文は、実に、ただの人間にしか見えなかった。
「なんか結構地味なんですね」
「そりゃね」
「化けてるって言うから、もっと姿形変えちゃう様な変化でもするのかと思っていました」
煙が立ち上ってあっと言う間に知らない誰か。
そんな忍者的なイメージが阿弥の中であった。軽いあこがれでもある。
「そんなこと気軽にできたら、妖怪がお互いに認識し合えませんよ」
「そうなの?」
はぁと文の溜め息。
「どんな姿にでもなれないから、私のこの姿が文なんじゃないですか」
「へぇ、愛着あるんだ」
「そりゃあ勿論ですよ。あなたより可愛いですから」
胸をポンと叩き、自慢げに。
すると、阿弥は顎に指を当てて、んーっと考え事。
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