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『はぁ、』 幸せが一気に逃げてしまいそうな溜息をついて、ゆっくりと腰を下ろすと、屋上のフェンスに背中を預ける。 そっと瞳を閉じれば、世界が閉ざされ黒に包まれた。 これで、何も見えないし、見なくて済む。 この色褪せた世界を、見ていたくなどなかった。 静かな屋上に、何処かの教室で行われている英語の授業の声が届く。 教師が教科書を音読しているのだろうそれを聞きながら、あまり上手ではないな、と勝手に評価する。 まぁ、授業をこうしてサボることが日課の私にとっては、この学校の教師の手腕など、全く気にするところではないのだけど。 …いや、教師の手腕だけではない。 もう、全てが、 どうでもいいのだ。
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