Χ零

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  「……で、これは何の“冗談(九十九神)”だ?」 高校指定の学ランを着用した少年は、財布の入ったエコバック片手に、目の前の惨劇に唖然としていた。 少年は今日、自分の記憶を頼りに商店街へと夕飯のおかずのコロッケを買いに赴いたはずだった。 しかし、いざ到着してみると、昨日まで確かにあった商店街は、その面影を残していなかった。 地元で美味しいコロッケで有名なお肉屋さんのあった商店街は、現在――運命の赤い“布”によって占領されていた。 余り栄えいたとは言い難いが、それでも地元の人達によって活気があった商店街。それが、横幅ニ十センチメートルほどある赤い布によって、商店街のアーケードや柱を縫い込むように張り巡らされ、普段は人の行き交う商店街も、今は獲物を待ち構える赤い蜘蛛の巣が蔓延る巣窟となっていた。 人一人いない廃墟となった商店街と鮮血を連想する赤い布のコラボレーション。浮世絵離れし過ぎたそれは、少年の目に気味悪く映った。 「ん~……。流石にこれだけじゃまだ判断できないわね」 そんな目の前の異常現象にも動じることなく、むしろ平然と、少年が在籍している学校が指定したブレザーに身を包んだ長髪の少女は、少年の質問に応えた。 「でも強いて挙げるとすれば……可能性は二つ。 布の九十九神、もしくは、布を織る道具の九十九神の仕業ね。 まぁどちらにしろ確実に言えることは――あちらさんは、これだけの量の布を操る力量を持っているってこと。
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