Χ零

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「あ~……うん。気をつけろよ」 少女とは打って変わり、少年の表情はうかなかった。 故意ではないにしろ、太股に魅入って少女を見殺しにしかけた手前、擦り寄ってくる少女を直視できないでいた。 少女の言動は、少年にとって精神的にも肉体的にも辛いものがあった。 ――グリグリ辞めて……胸が、えぐれる。もしかしてトモ……ちょっと恨んでる? 「舞い上がってる所悪いけど、アンタが死にかけてる間、私が殴るまでそいつアンタの太股しか見てなかったわよ」 ――ウッ! 容赦ない長髪の少女の指摘が、少年の心に刺さった。 「フン! 何を言うかと思えばそんなこと……。 私がソウジさんに抱く忠誠(という名の愛)をなめないでください! 私の忠誠はすでに、“ソウジさんの救い難いムッツリ”も許容しています!!」 ――ぐはぁぁぁぁ!!! ショートヘアーの無意識の言葉が、少年の心を砕いた。 「あっそ。 まぁそれはいいとして……何のうのうと殺されかけてんのよ! “変身”しなさいよ! 容積が少なくなれば布の束縛は解けただろうし、よしんば抜け出せなくても、アンタ頑丈なんだから締め付けにも耐えられたでしょ?」 「フフフ……愚問ですねイワミノカミさん」 ショートヘアーの少女は、うなだれる少年の胸から一歩前へ出ると、怪訝な顔をする長髪の少女へ向けて堂々と己の主張を申し立てた。
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