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「この前の話ですけど。」
私のせいだと言われて、それをそのまま美馬さんに返したかったと同時に、頭の中に浮かんだ言葉を、今度こそ言おうと決めているんだ。
「ん?…何だっけ?」
まだ砕けて話すことができない私と、慣れてきている美馬さんの間に違和感があるのは、私のせいかもしれないって、どうしてなのか分からないけどそう思った。
「私のせいだって、やつです。」
「あぁ、気にしてるの?」
素直になれないから。
会いたいとか、そういうことは言ってしまえるのに。
真っ赤になって、全身が炎天下に放り出されたように暑くなるけど、言えるのに。
ただ、貴方のことが好きですって、それが言えない。
言いたいのに、言えない。
鏡の前で練習してみたり、送るつもりのないメールで文字を打ってみたり、そんなことで誤魔化して、まだ言ってはいけないとブレーキをかけて。
散々、それっぽいことが伝わるようにしているつもりだけど……もうその繰り返しじゃダメだって、何となく分かってきてしまっていて。
「明奈さん?」
美馬さんが何も言わなくなった私を考えていてくれる。
今こうしている時間は、少なくとも美馬さんは私の事を想っていてくれているって……分かるから。
「だったら……今から、会いに来て…ください。」
まだ2人で会った回数も少ない。
連絡を取り合っていても、友達以上になれるのか分からない。
きっと好意を寄せていてくれると分かるだけで、それが私と同じ恋心なのかが分からない。
「この前みたいなこと言うなら……会いにきて。」
だから、このまま同じことを繰り返していてもダメなんじゃないかって。
進みたいなら、私からきっかけを作ってもいい。
言葉尻を、少しだけ美馬さんに近付ける勇気も振り絞った。
一昨日の夜、電話を切ってからずっとずっと。
会いたい、触れたいって……そればかりで苦しくて。
こんなに会いたいのに、あんなこと言われたら、もう辛くて、痛いほど胸が苦しくて。
もう隠せなくなっているかもって、自覚した。
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