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目を大きく見せるには、アイラインとマスカラ。
下目蓋にも自然に馴染むシャドウで光を与える。
メイクの仕方は分かるのに。
私が吸い込まれた瞳の持ち主に会う方法は、分からない。
一緒にいた彼女が、顧客カードに記入してくれたら良かったのに、あっさり断られて。
すまなそうにしている彼が、私に小さく謝るように首を竦めたんだ。
もう少しで新しいスキンケアが発売になるから、そのダイレクトメールを送れたら……また彼女と一緒に来てくれたかもしれないのに。
……でも、彼女と一緒じゃ、店員とお客さまの枠を超えることはできないんだよね。
「手塚さん?」
「あ、はい。」
「あなた最近ボーっとしすぎ。
やる気がないなら帰って頂戴。」
「すみません。」
シャキッとしなきゃ。
また会えるかもしれないって、何パーセントあるのか分からない可能性を持つだけにしよう。
「いらっしゃいませ。」
「あの、マスカラを探しているんですが。」
「畏まりました。こちらへお座りください。」
会社帰りに寄ったOLさんかな。
身だしなみもキチンとしていて……でも、髪がフワフワで小柄で可愛らしい人。
この人になら、どんなマスカラがいいかなぁ……女の子って感じ全開のを好んだりするのかな。
「小悪魔っぽくなれるマスカラありますか?
ウォータープルーフのがいいんです。」
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