彼女のいない日常

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結局、今でも彼女の会社の製品を愛用している。 店に行く度に、初めて会った時のことを思い出すから、行かなければいいのにと思うけれど、肌に合うものがそれなのだから仕方ない。 「Bonjour.」 仕事の合間に訪れた百貨店のコスメコーナー。端の方にある大きなテナントに、俺は定期的に訪れる。 そして、今日は化粧水とシャンプーを買ってから、クロワッサンが美味しいカフェテラスへと向かうことにした。 いつ来ても混み合う店内を避けて、通りに面したテラス席に座ると、ノートパソコンで仕事に関係ありそうなニュースに目を通す。 明奈と家にいる時も、こんな風に世の中の動向を見ていたら、眉間に寄った皺を指で押されたことがあった。 「キリッとしてて素敵だけど、皺が取れなくなっちゃう。」 って、美容部員ならではの視点で話しかけてきたんだったな。 懐かしみながら、画面をスクロールしていると、ふと視線を感じて、俺は隣の席に顔を向けた。
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