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雨の日は嫌いだ。
勝手なイメージだけど、明奈と別れた日を思い出す。
心の中の、重く暗い雲の下で豪雨に打たれながら跪く自分のイメージ。
恋愛1つでこんなにダメな男になるなんて、思ってもみなかった。
「まだ好きなのかよ。」
「なんだかんだ、そういうことになるけど……前とは少し違う。」
「違うって、何が?」
「好きだった人のことって、嫌いになれないと思わないか?」
「あー、まぁそうだなぁ。」
時差を越えて仕事の連絡をしてきた楠と久々に話す。
デスクから休憩室に場所を移して話すのは、明奈のことだ。
「俺さ、この前明奈ちゃん見たんだよ。多分明奈ちゃんだと思うんだけど……空港にいたよ。」
「空港?」
「友達の見送りで偶然見たんだけど、そっち行きの搭乗口に入って行った。……本当、見間違いだったらごめん。」
そっか。そうだよな、3年も経つんだ。
「楠、ありがとう。」
それでもまだ好きでいることは、決して悪いことではない。
もしかしたら、この街に明奈がいるかもしれない。
無理やりでもなんでもいいから、もう1回会いたいんだ。
諦めるのは、それからだっていいじゃないかと思った。
3年経ったけど、まだ好きでいられるこの気持ちは本物だってことなんだ。
本物を諦められないのは、当然。
やり直すなら、これからだ。
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