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夕方になって、フラペチーノを片手に仕事を進めていたら、傍らに置いていた携帯が鈍い音を立てて震えた。 〈明奈、パリに来てるの?!〉 皐月からのメールだ。 時差を考えると、まだ向こうは朝の時間のはず。 〈おはよう。いま会社だよ。〉 〈会社って、パリの?〉 〈違うよ。いま日本にいる。どうしたの?〉 時差があっても連絡が取れる世の中は便利だ。美馬さんに連絡してみたいけど、連絡先を知らないまま。 真理恵さんに聞いても良かったけど、美馬さんが伝えてくれなかった事を考えると、彼は望んでいないんだと思える。 お互いに、遠くから応援し合う元彼と元カノ。 そんな関係になったんだよね、きっと。 〈じゃあ、いい。〉 〈え、何?〉 〈ん……美馬さんをカフェテラスで見かけたんだけど、明奈にすごく似た人といたから……でも、明奈だったら、パリに来る時に私に連絡くれててもおかしくないもんね。ごめん、見間違いだね。美馬さんのことも、きっと見間違い。〉 ざわざわと騒がしくなる心の中。 見間違いじゃなかったら? 美馬さんが、他の女性といるだけで、落ち着かなくなる。 別れてから、何度も考えてきたことなのに。 彼には他に新しい相手が出来ているだろうって、考えることは出来ても、いざ現実のことになったら途端に嫌だと思ってしまう。 こんなのワガママだと分かっていても、消せない気持ちがそうさせる。
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