4374人が本棚に入れています
本棚に追加
/289ページ
「出張?」
「うん。あれ?聞いてないのか。」
山城くんが選んだお店は、大人気のイタリアンダイニング。連日予約で埋まっていて、なかなか来れないでいた場所だ。
いくつかすぐに出てきそうなものを頼んでから、ビールで乾杯をした後、山城くんが突然出張すると言い出した。
「いつから?」
「来週からで、帰りは翌週。往復考えたらそれくらいの日程組まないとダメだって言われてさ。」
「誰に?」
種抜きオリーブをピックで刺しながら、山城くんに問う。
「もちろん専務。」
そっか、だから最近やたら打ち合わせしてたのか。
「だったら言ってくれたら良かったのに。」
「言ったらサプライズにならないでしょ。専務には、今日の時点でもまだ言うなって口止めされてるけど、そうもいかないからね。」
来週、山城くんが1週間不在となると、今までチームで動いていた車輪が1つなくなるということだ。
他にもサポートメンバーはいるから、ものすごく不安ではないけれど、山城くんがいないということは大きい。
「引継ぐことあれば教えてね。」
「え、なに言ってるの?」
山城くんがジョッキを持ち上げて、したり顔になった。
「明奈さんも同行に決まってるじゃん。チームなんだから。」
同行?そもそも、どこへ出張するのだろう。
「私も行くの?どこに?」
「専務が言ってたよ。フランス語が話せるならいいんじゃないかって。」
最初のコメントを投稿しよう!