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「出張?」 「うん。あれ?聞いてないのか。」 山城くんが選んだお店は、大人気のイタリアンダイニング。連日予約で埋まっていて、なかなか来れないでいた場所だ。 いくつかすぐに出てきそうなものを頼んでから、ビールで乾杯をした後、山城くんが突然出張すると言い出した。 「いつから?」 「来週からで、帰りは翌週。往復考えたらそれくらいの日程組まないとダメだって言われてさ。」 「誰に?」 種抜きオリーブをピックで刺しながら、山城くんに問う。 「もちろん専務。」 そっか、だから最近やたら打ち合わせしてたのか。 「だったら言ってくれたら良かったのに。」 「言ったらサプライズにならないでしょ。専務には、今日の時点でもまだ言うなって口止めされてるけど、そうもいかないからね。」 来週、山城くんが1週間不在となると、今までチームで動いていた車輪が1つなくなるということだ。 他にもサポートメンバーはいるから、ものすごく不安ではないけれど、山城くんがいないということは大きい。 「引継ぐことあれば教えてね。」 「え、なに言ってるの?」 山城くんがジョッキを持ち上げて、したり顔になった。 「明奈さんも同行に決まってるじゃん。チームなんだから。」 同行?そもそも、どこへ出張するのだろう。 「私も行くの?どこに?」 「専務が言ってたよ。フランス語が話せるならいいんじゃないかって。」
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