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1日1日が長い。
こんなにも先の日付を待ち遠しく思ったのは、彼と別れてから初めてのことかもしれない。
まだ水曜日、まだ木曜日って日を追うごとに予定が近付いて、それと同じだけ胸が苦しく鳴く。
きゅうっと、音を立てて痛いくらいに締めつけてくる。
「で、聞いてる?」
「ごめん、聞いてなかった。」
出発前に誘われて、恒例の山城くんとご飯中。
会社を出てから、ほぼプライベートモードにスイッチした頭の中は、美馬さんのことで埋め尽くされている。
「なんか最近、そんな感じだよね。大丈夫?」
「うん、本当ごめんね。ちょっと考えごとしちゃってて。」
「考えごと?フランス語に対応できるかどうかの不安なら心配ご無用だよ。俺がいるんだし。」
「そうだよね。頼りにしてます。」
そう言って、私はぺこりと俯いた。
こんなんじゃダメだ。
もっと仕事に集中しないと。
パリに行くのは仕事であって、1日たりとも遊びの予定は無い。
言い聞かせるように唇を引き締めて、山城くんの話に耳を傾けた。
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