9

7/9
4374人が本棚に入れています
本棚に追加
/289ページ
1日1日が長い。 こんなにも先の日付を待ち遠しく思ったのは、彼と別れてから初めてのことかもしれない。 まだ水曜日、まだ木曜日って日を追うごとに予定が近付いて、それと同じだけ胸が苦しく鳴く。 きゅうっと、音を立てて痛いくらいに締めつけてくる。 「で、聞いてる?」 「ごめん、聞いてなかった。」 出発前に誘われて、恒例の山城くんとご飯中。 会社を出てから、ほぼプライベートモードにスイッチした頭の中は、美馬さんのことで埋め尽くされている。 「なんか最近、そんな感じだよね。大丈夫?」 「うん、本当ごめんね。ちょっと考えごとしちゃってて。」 「考えごと?フランス語に対応できるかどうかの不安なら心配ご無用だよ。俺がいるんだし。」 「そうだよね。頼りにしてます。」 そう言って、私はぺこりと俯いた。 こんなんじゃダメだ。 もっと仕事に集中しないと。 パリに行くのは仕事であって、1日たりとも遊びの予定は無い。 言い聞かせるように唇を引き締めて、山城くんの話に耳を傾けた。
/289ページ

最初のコメントを投稿しよう!