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強がって、もう平気だと言う彩星さんの言葉を否定した。
1人でいたかったからだと言うけれど、そんなはずはない。
悲しそうな瞳が、その証拠なんだ。
どうしたら悲しい顔を見ずに済む?
初めて会った時のように微笑んでくれる?
「今日から、お友達になりましょう。」
気付いたらそんな台詞を選んでいた。
本当は寂しそうな彼女といられたらとも思ったけれど、それは許されないし、彼女も望んでいないと感じた。
1人じゃないんだと彩星さんに伝わるように真っ直ぐ見つめたその瞳は、明奈と同じように綺麗な黒でドキドキする。
もし、明奈が1人でいたなら、こんな風に寂しそうな顔をしているのだろうか。
別れたあの日に言ってくれた気持ちは、まだ失効を迎えていないかもしれない。
お互いにまだ想い合っているとしたら、明奈を迎えにいかないと……こんな風に寂しそうな顔をさせたくない。
彩星さんを見送って、俺は携帯を取り出した。
消せずにいる明奈の連絡先。
まだ繋がるのだろうか。
ディスプレイに水滴が付いて、俺は家路を急いだ。
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