失恋はイメージ通りに

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帰宅して、濡れたジャケットをハンガーに掛けた。 革靴とバッグを丁寧に拭いて、風を通す。 ソファに座って、携帯と睨めっこするように黙っていると、壁時計の秒針が1秒ずつ刻む音が聞こえた。 3年分だ。 この音が3年分積み重なって、今に至る。 俺の気持ちは変わりなく明奈に向いているけれど、彼女はどうだろう。 それを考えても答えなんか出るはずはないのに、この作業を幾度も繰り返してきた。 もう、終わりにしよう。 こんなにも進まない状況は、プラスじゃない。 少し間を置いて聞こえたのは、アナウンス。 勝手に喉が上下して、すぐ後に続く言葉に耳を澄ませる。 〈おかけになった電話は電波の届かない場所におられるか、電源が入っていないため掛かりません。〉 終話を選んで、俯く。 目を瞑ると、フローリングに涙が零れた。 良かった。連絡先、変えてなかったんだ。 こんな単純なことに、3年も費やしたなんて本当にバカだと思う。 だけど、3年分積み重なって、本物になった気持ちなんだ。 話せるのがいつなのか分からないけれど、伝えようと思う。 迎えに行ってもいいかな? 明奈、君のことがどうしても好きなんだ。 どんな答えをくれるかを気にしても意味がない。 この3年を無駄にしないために、俺は動こうと思う。
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