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「会えるかもしれないし、うわの空じゃパリの街で見つけられないから、頑張れって。」
渡仏する機内で山城くんに言われた言葉をそのまま言う。
パリに着いて2日目の夜、皐月と久しぶりに会えた。
幸せそうな笑顔で迎えてくれた彼女は、来年にも結婚する予定らしい。
日本にいた時より、すごく綺麗になっている気がする。
「そりゃ、山城くんも大変ね。きっと出来る男なのね。仕事が倍でもやり切る感じ。」
「倍?」
「明奈の恋まで気にしてくれちゃって。」
「気にしてって、たまたま写真見られたから。」
「うわの空なのは間違いないでしょーが。」
皐月がフランス語で流暢に注文すると、一緒に灰皿を下げてもらった。
「やめたの?」
「可愛い嫁になるには、これくらいするのよ、私だって。」
焼きたてのバケットとオリーブオイルが出てきて、一緒に千切って頬張った。
「で、どうするの?見つけられそうなの、美馬さんのこと。」
「うーん……微妙。」
「全くあれだけ言ったのに、3年間何もしないなんて呆れるわ。忘れられてても、知らないわよ?」
「…うん。」
本当はそんなの嫌なんだけど、それはそれで受け入れるしかないと、半ば諦め気味だ。
山城くんに頑張れと言われたって、広い街で偶然会える確率は低いと思うから。
完全に運任せと言うか、この恋が運命の恋なのかだと思う。
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