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頑張れと言ってくれた山城くんは、本当に優しい。
誰かに聞いて欲しくて、美馬さんのことを話したら、すごく真剣に耳を傾けてくれたんだ。
「……山城くん。」
パリに着いて本社に寄って、1番大きな店舗へと向かう途中、知らない番号から電話がかかってきた。
日本からであることを示す、81から始まる番号ではない。
フランス語が苦手な私は、異国の地で知らない番号に応答するのが不安だったから、隣を歩く山城くんに、自分の携帯を渡した。
「……Bonjour.」
綺麗な発音で躊躇なく話す山城くんが羨ましくもある。
店舗時代から人気があって、同じように専務に声をかけられて。
私と似たルートで本社勤務になったけれど、中身の濃さが違う気がする。
「……少々お待ちください。すみません、どちら様でしょうか。」
突然、日本語で会話する山城くんに視線を向けたら、驚いた表情が返された。
「明奈さん、美馬さんからだよ。」
「……え?」
美馬さんから、という言葉の意味は分かっても、ついて来ない頭の中がごちゃごちゃに散らかり始める。
「美馬さんって、男の人。彼じゃないの?」
「……あ……うん。」
と言いながらも、信じられない私は、出来るだけ平静を保とうと微笑みを浮かべて首を振った。
美馬さんからなんて、あり得ないよ。山城くんの聞き間違いかもしれない。
会いたいけど、会えるはずなんてないんだから。
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