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「一緒にいた彼は?」
「山城くんは、仕事の仲間です。同じように店舗から来た人で、異動からずっと一緒に頑張っているんです。」
「いい仲間がいて良かったね。」
「はい。」
少しくらい妬いたりして欲しいな……なんて、欲張りだよね。
元彼に、そんな気持ちを期待しちゃいけない。
ここに来て、往生際の悪さがいい雰囲気に水を差す。
パリに戻ってから実家に住んでいたけど、最近一人暮らしを始めてセーヌ川の近くのアパルトマンに住んでいることや、仕事で部下が増えたこと、楠さんが結婚してからも遊びに来てくれたこと……離れていた今日までの色々を話してくれたけど、そのどれにも私はいない。
「明奈はどうしてたの?」
毎日仕事をして、毎日楽しく過ごしてきた。
だけど、100%じゃなくて辛かった。
彼の毎日が充実していたと知って、私のことを話しにくくなる。
「いい?素直になりなさいよ。ガツンとぶつかって言いたい事言って、振られても構わないくらいの意気込みじゃないと、このチャンスは生かせないわよ。」
皐月に言われた言葉を思い出す。
いざという時に逃げ腰になる私のことを熟知しているだけある。
3年前のあの日、仕事を選んだ私がこの先後悔しないために、ちゃんと言わないといけない。
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