10

11/11
前へ
/289ページ
次へ
椅子から立ち上がって、彼が私の元へと歩いてくる。 3年の月日は一層彼を素敵にさせていた。 私は、変われたのだろうか。目指す姿に近付くことは出来たのかな。 「……明奈。」 彼が私の名前を優しく呼んだ。 包み込むような温かい声が、私の心を落ち着かなくさせるけど、これは彼に恋をしている証拠だと思う。 お互いに正面から視線を合わせると、私を見下ろしていた彼が突然ひざまずいて、見上げる視線に変わった。 「辛い思いをさせてごめん。もう離さないから……だから。」 耐えられなくなった睫毛から、涙が落ちていく。 一粒一粒に今までの毎日が詰まっているみたいに、いろんな色をしているように感じた。 「僕と恋の続きをしませんか?」 彼の指先に乗せられていた手が引かれて、そっと唇が触れる。 「Veux-tu m’epouser?」 嬉しすぎて言葉が出ない私は、泣きながら何度も何度も頷く。 夢みたい。 諦めかけた恋が実ったなんて。 愛しくて仕方ない貴方から、こんな言葉が貰えるなんて。 ー「結婚してくれますか?」ー
/289ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4378人が本棚に入れています
本棚に追加