4378人が本棚に入れています
本棚に追加
何度も見ては、幸せのため息が漏れる。
頬が緩んでいるのも自覚がある。
「きれー……。」
私の左手、薬指。
プロポーズの後、渡されたのは可愛らしいリングだった。
陽光を乱反射させている立て爪のダイヤモンドを眺めては、時が経つのも気にせずに眺めてしまう。
日本に戻って1ヶ月余り。
お互い仕事があるから、また離ればなれだ。
寂しいかと聞かれたら、とっても寂しい。
好きな気持ちを抱えたまま1人耐えていた3年間よりも、もしかしたらお互いの気持ちが通っている今の方が苦しいかもしれない。
苦しみと切なさの種類が違うけど、痛みは心の同じ場所で感じる。
「出張して婚約して帰るとか、前代未聞過ぎるからね。」
山城くんは、おめでとうと言ってくれたけど、帰国してからは私を冷やかして面白がるようになった。
「へへ…。」
自分でも気持ち悪いのは気付いてる。だけど、自然と笑顔になっちゃうんだもん。
「僕と恋の続きをしませんか?……ねぇ。全くキザね、パリの男は。」
誰よりも先に報告した皐月には、大騒ぎしたくせにすんなり纏まった私と彼に呆れ顔だ。
最初のコメントを投稿しよう!