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「何をしている方?ご長男?お住まいは?やっぱり瞳は黒じゃないのかしら?」
さっきから母親の質問攻めだ。
「証券関係で、長男だけど弟さんとは双子。今の住まいはパリの美術館の近く。瞳は珍しいらしいんだけどすごく綺麗なグリーン。」
「お名前は?」
一気に答えた私に、母親は笑顔のままで続けた。
「美馬 Christophe 涼。言っておくけど、お母さん会ったら倒れると思うから、覚悟してよね。」
「うふふ、楽しみだわ。グリーンアイなんて。」
まるで母親が結婚するみたいな浮かれように、私は呆れてしまいそうだけど、嬉しそうな親の顔が見れてよかったと思う。
問題は、父親だ。
「お父さん、いい?」
書斎にこもって、難しそうな本を読む父親に声をかけた。
「なんだ。」
年末休みに帰ってきた娘に、なんだとはなかなかの堅物ぶりだ。
「話したいことあるんだけど。」
「そうか。なんだ?」
回転する座椅子ごとクルリと回って向かい合わせになった父親は、ザ・日本の父親みたいな雰囲気。
幼い頃から厳しく育てられたと思うし、家の中では父親が絶対だった。昔は母親の好みが全く理解不能だった。
「結婚を前提にお付き合いしている人がいます。」
「そうか。明奈もそういう年頃だもんな。相手は?」
ここにきて、やっぱり言葉に詰まる。父親は許してくれるのだろうか。
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