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「店舗で働いていた頃に知り合った方で、今はお仕事でフランスに住んでいます。」
「フランス?何の仕事だ……貿易関係か?」
「証券関係です。」
「そうか……お相手の家は何をされているか知っているのか?」
母親とは違うことを、きちんと聞いてくるあたり、さすが父親だと思ってしまう。
娘をお嫁に出すにあたり、相手の家柄を気にするのは当たり前だと思う。できるだけ裕福で、苦労のない結婚生活を送ってほしいと思うからだと聞いたけど、まだ親になった経験がないから、その気持ちを知ることはできない。
「お父様が大手不動産会社の会長で、お母様は元バイオリニストだと聞いています。」
これは、私も聞かされて驚いた。
美馬さんの上品さは、きっと育った環境のせいだ。
彼は大したことないと言うけど、庶民の私からすれば、シンデレラ気分だ。
「……パリの不動産?外国の方なのか?」
父親の察しの良さに、こんな時も参ってしまう。
隠し事はすぐバレてきたんだ。彼とデートだということを母親だけに話しても、なんとなく嗅ぎつけては、遅くなるなと連絡してきたこともある。
「はい。フランスと日本のハーフの方です。」
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