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「相応しいかどうかは、僕が決めます。」
「そうはいかない。確かに互いを想い合うことは大切だが、それよりもきちんとお前のパートナーとして、この家を継げるかどうかを考えているのか?」
父親は、美馬家に嫁いだ。
母方の曾祖父がパリで不動産を始め、二代目を祖父が継ぎ、1人っ子だった母と一緒になったのが三代目の父親だ。
だからこそ、心配しているのだと思う。口には出さないものの苦労があったはず。
「勿論考えています。考えた結果です。彼女なら、きっと僕を支えてくれると信じています。そして、僕が支えたいのは彼女以外、他にいません。」
沈黙の意味は、なんだろうか。
もし許されないのなら、俺は跡継ぎをやめて今の仕事を頑張ろうと思う。そもそも継ぐかどうか悩み、社会に揉まれて世の中の流れを知るために一度出たんだから、戻らなくても何かが大きく変わるとは思えない。今の生活のままだ。
「相手の方のお名前は?」
「手塚 明奈さんです。」
「何をされているんだ?」
「美容関係のメーカーで働いています。」
「ご実家は?」
……きた。
世間体を気にした質問。
どこかの会社の令嬢とか、名の通った家系とか、そういうのを求めているらしいけど、美馬家はそんなに大した家じゃない。
曾祖父が不動産を始めて、母がバイオリニスト。それだけのことだ。
「普通のご家庭と聞いています。」
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