4379人が本棚に入れています
本棚に追加
日が傾いて、暖かさが感じにくくなってきた時間。
もう少しで、今日のデートは終わってしまうと予感して、もっと一緒にいられたらいいのに…と思ってしまう。
また今度って約束はしているけれど、今日のこの時間が終わってしまうことが、どうしても寂しい。
「帰りは、ご自宅の前までお送りしますね。」
「ありがとうございます。」
時間が経てば、少しくらいは慣れるかと思っていたのに、全くその様子を見せない私の恋心。
「やっぱり、いきなり砕けろと言われても、そう簡単には変えられないですよね、話し方。」
「あ…ごめんなさい。」
「いや、結局僕もこんな調子だから、気にしないで。」
恋の始まりというか、まだ親しくなり始めた2人だからというか、曖昧な距離みたいなものがある。
ハッキリと、まるで目に見えるほどに。
「ドライブ、楽しみにしてます。次のご都合が分かったら教えてくださいね。」
「はい。涼さん…は、基本的に週末がお休みでしたよね。」
「そうですね。でも、なるべく合わせますよ。明奈さんに。」
期待してしまう言葉が、私の中に、また放り込まれて。
それをどう処理したらいいのか、焦ってしまう。
「連絡、しますね。」
「はい。」
待ち合わせをした駅前を通り過ぎた。
まだ日が高かった時間は、駆け出してしまいそうなほどの気持ちで歩いた道が、今は名残惜しさで埋め尽くされている。
「ありがとうございました。帰り、気を付けてくださいね。」
シートベルトのロックを外して、忘れ物がないか確認して。
「こちらこそ。」
鮮やかで深い綺麗なブルーが遠くなっていった。
最初のコメントを投稿しよう!