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もう少し一緒にいたかったなって気持ちと、もうこれ以上は心臓が持たないと自覚する、デートの直後。
タイミングよく震えた携帯には、皐月の名前が表示されていて。
「皐月ぃー。」
緊張の糸がプツリと切れた私は、開口一番に彼女の名前を呼んでいた。
「っていうか、見ちゃった。美馬さん。」
「えっ?!」
「うーしーろ。」
まだ自宅マンション前で、余韻に浸る私の後ろにいたのは、エントランスに立つ皐月で。
「そこのスーパーに買い物に行った帰りなんだけど。」
ツカツカと、いつものように姿勢よく歩く皐月が、ニマニマしながら私の前に立って携帯をしまった。
「…顔、真っ赤だね。明奈。」
「……っ。」
声にならないのは、否定できない事実を体感しているからなんだけど。
「どうだった?楽しかった?」
「うん……とりあえず、どこかのカフェ行きたい。」
「私の家寄ってからね。」
あっという間に過ぎていった時間なのに、100%のジュースより濃厚で、甘くて。
次がいつなのか楽しみで仕方ないんだけど、とにかく今日のことを聞いてほしくて。
美馬さんの車が走っていった道を、皐月と並んで歩いた。
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