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「それで?キスした?」
「ちょっ、何を。」
ホットのソイラテを吹きそうになりながら、皐月を軽く睨む。
「いや、明奈がそのつもりなくても、彼がそのつもりならあり得るじゃん。」
「美馬さんは、そんなことしないもん。」
「だからさ、相手は生身の男なんだってば。手くらい繋いだでしょ?」
数時間前から、ずっと繋いでいてくれた美馬さん…涼さんの手のひらの感触を思い出して、触れていた箇所がムズムズする。
「はい、繋いだのね。っていうか、大人なんだからそれくらいで舞い上がらないの。」
「皐月は、好きな人とデートしたりしたら、こんな感じにならないの?」
「…なるに決まってるじゃない。」
皐月が、穏やかに微笑んで私の頭を撫でた。
同い年なのに、お姉さんみたいな皐月は、こうやって私の事を冷やかしたりして楽しむけど、本当はすごく優しいからだって知っている。
だからこそ、長年友達でいられるんだけど。
「次の会う日とかは?」
「まだ決まってないけど、これからもデートしたいって言ってもらえて…。」
「うん、それで?」
「彼は私の事、明奈さんって呼んでくれるんだけど、私はずっと美馬さんって呼んでて……そうしたら、彼から、名前で呼んでって言われたりした。」
「聞いてるこっちが恥ずかしくなる会話ね。」
「ちょっと、皐月がっ。」
「はいはい。それで、何て呼んでるの?」
「涼、さん…。」
「ふぅーん。早くお礼のメールしなさいね。愛しの涼さんに。」
「……はい。」
お礼のメールは間違いなく送っていたと思うけど、皐月が居てくれた方が心強いだなんて思ってしまうあたり、相当私は免疫がないんだろうな。
美馬さんに対しての、それが足りなさ過ぎる。
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