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デートをしてから。
私の中で変わったことがある。
照れちゃうくせに、気持ちを言うようになった。
それは、メールだったり電話だったり、ツールは違うけれど、ちゃんと言うようになった。
言おうとしているんじゃなくて、どうしても言いたくなってしまうんだ。
…会いたいって。
そうすると、美馬さんも同じように思っているということを、私の言葉よりもっと大人の言葉で返してくれる。
一昨日は、美馬さんから電話をくれた。
ちょうどお風呂から上がって、髪を乾かした後。
その1日があと少しで終わってしまうような、遅い時間だった。
「遅くにごめんなさい。もう眠っていましたか?」
「いいえ、ちょうど湯上がりです。美馬さんは?」
「僕はいま会社を出たところで……なんだか明奈さんの声が聴きたくて電話してしまいました。」
「…っと…ありがとう。」
「こちらこそ。」
そう言って、美馬さんはクスッと笑って、深く息をついた。
きっと、そんなつもりはなくて、疲れた身体が一息ついたような、とても自然な音だったと思う。
そして訪れたのは、何を話すわけでもない、沈黙の時間。
それが普通になるまでは、まだまだ関係が浅くて。
もっと時間が欲しくて。
「あ、あのっ……私も話せて嬉しいです。本当は……会いたいけど…。」
気持ちが文字となって脳裏に浮かんで、それを言うか言わないかジャッジしている間に、沈黙に耐えられず、気持ちを抑えられなかった私は、伝えてしまっていた。
「僕も、会いたいよ。会って、また触れたい。」
美馬さんがふふっと笑った息が、電話越しに伝わった。
返す言葉が見つからない私を、こうして困らせているのは確実に分かっているはずなのに。
「そう言わせてるのは、明奈さんだからね。僕のせいじゃない。」
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