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「……本当に、明奈さんは…。」 シャワーから上がって、ベッドに腰掛けながら話している私の耳には、規則的に刻まれる、アスファルトと靴底が接する音が聞こえている。 美馬さんが呟いた言葉に何も反応できない私は、ただただ携帯を握りしめて、電話の向こうにいる美馬さんのことが少しでも分かるように、情報を集めようとする。 「……。」 お互いに、何も言わなくなって。 このままどうしたらいいのか、分からなくて。 「……あ、あのっ。」 耐えきれなくなった私が、何も考えずに口走った言葉で、美馬さんの足音が止まった。 「はい?」 「ごめんなさい、今の。」 「ん?」 「今のっ……無理言って、ごめんなさい。気にしないでください。」 せっかく言葉尻だけでも美馬さんに合わせるようにした小さな努力が、あっけなく水の泡になっていく。 もしかしたら会いに来てくれるかもしれないって、期待していた自分にたった今、気付いた。 「そんなこと言われても、無理だよ。」 「そうですよね、お仕事で疲れてるし、もうこんな時間だし。」 無理だと、ハッキリ言葉にされて、それを伝えられて。 グッサリと刺されたように痛い私のハートは、今にも恋の色の血を流しそうだ。 「気にしないでなんて言われても、無理なんだ。 ……僕も、会いたい。」
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