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「会いたいんだ。」
もう1度言われて、現実に戻った。
「えっと……でも、もうこんな時間だし。」
「会いに来てと言ったのは、明奈さんなのに?」
「そうだけど…。」
「……冗談。今日は会いに行かないよ。」
「えっ、あ……うん。」
会いに来てほしかったけど、もう遅い時間だから気が咎める。
でも会いたくて。
とんでもないワガママを言ってしまったのではないかと、気が付いた。
「ごめんなさい。ワガママ言って。」
「いや、大丈夫。気持ちを我慢されるよりいいよ。それに、僕だって会いたかったんだから。」
美馬さんは、やっぱり私よりずっと大人だと思う。
私のワガママが、ワガママにならないように気遣ってくれている。
「もう少し時間が早かったら、会いに行ってるんだけどね。」
「うん。」
ほら、やっぱり。
私の欲しいものをちゃんとくれる。
本当に会えるなんて思ってなかったんだ。
会いたいと言ったら、美馬さんも会いたいって言ってくれるかなって……知りたくなってしまって。
自分の気持ちを進めていいのかどうか分からなくなるくらいに……。
「好き。」
気付いたら、呟くように、でも明らかに伝わる声で。
好きって、気持ちが溢れて。
溢れたらもう、止められなくて。
止めることすら忘れてしまうくらい、夢中で美馬さんのことを考えていたから。
想いが、シンプルな言葉になっていた。
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